- 新着情報
- やちむん工房・陶真窯へ潜入!工程でわかる“手しごと”の現場!ところで、気に入らない壺を叩き割る職人は本当にいるのか…!?
2025.09.26
やちむん工房・陶真窯へ潜入!工程でわかる“手しごと”の現場!ところで、気に入らない壺を叩き割る職人は本当にいるのか…!?

はいさい!!沖縄シークヮーサー本舗のしもじです!
本記事ではやちむん工房・陶真窯に潜入し、その制作工程や工房の雰囲気に迫ります!
陶芸や焼き物というと、ヒゲの職人さんが作務衣を着ていて、出来の悪い壺を「気に入らん!」バリーン!的な世界を思い浮かべます…。さて、本当のところは…。
先入観とさまざまな想像を膨らませながら、沖縄シークヮーサー本舗スタッフ陣は現地へ向かいました。
今回は工房スタッフの浜元さんにガイドしていただきました!
本日はよろしくお願いします!
■工房は窯が燃えててメッチャ暑いです!

中はメッチャ暑いですよ!特に今日は窯を焚いているので。
なので、ちょいちょい休みながらが良いかなと…。

さっき、外からゴウゴウ聞こえました!

本日はよろしくお願いします。
暑さに備えて今日はスポーツドリンクも持ってきてます!

自販機も向こうにあるので、むしろ必ず休憩は取った方が良いです!
職人さんでも倒れちゃうことがあるので!
説明は手短の方がたぶん健康にはいいかも?

取材で、そこまで健康の心配をされたことは初めてです…(笑)

工房の中には冷房がありません!なので、至るところに扇風機や冷風扇が。
特に近年はとんでもない暑さの上に、毎週火曜と木曜は窯の火が燃えていて、さらにとんでもない!
職人さんも自身の体調を見ながら休みながら作業しているそう。
職人というと、頑固でルールが厳しく、師匠と弟子のような保守的なイメージもあったので、意外!
工房内では冗談が飛び交っていたり、黙って作業している人もいたりとそれぞれのスタイルがある様子で、意表を突かれました!
ここから、各工程を読者のみなさまにご紹介していきます!
“土作り”から始まるのが陶眞窯

まず、ここは土を作る場所なんですよ
ただの泥に見えるが、これがうつわの原材料

すごーい!!!

え? 土って工房で作るんですか!?
何かをブレンドする感じで作るんですか?

そうなんです、沖縄県内の中北部の赤土をメインにブレンドしています。土って作る過程で出る削りカスも基本的に再利用するんですよ

へぇ~

他の工房さんだと組合から土を買うこともあるんですけど、陶眞窯はブレンドし直したり削りカスも再利用して作り直します。
製作途中の土でも捨てることは無いです。


おお!お若いお二人ですね!
若い方は居ても一人か二人くらいだろうなと思い込んでいたので、これもまた裏切られました!
やはり力仕事には筋肉が必要

先ほどの土がこれです。四角いパンみたいな形ですよね。


これでうつわを作るんですね

これくらいの筋肉がないとこの作業ができないという感じです(笑)まぁ冗談ですけど、でも力作業ではありますね。

すんごい筋肉ですね! この仕事だけで作った筋肉ですか?


いやぁ~、趣味ですね。

すごい!

趣味の筋肉が生かされているんですね。かっこいいなぁー!

光栄です。
■陶芸の花形!“ろくろ”
やはり、陶芸の花形と言えば、ろくろ!
ベテランの聖域、かと思えばそうでもないそうです。ただ、それでも技術が必要!

この方が大ベテランなんです!なんでも作れる。言えばなんでも作ってくれます。
あそこに見える大きな酒壺とか作られる方です。
オサムさんて何年ぐらいやられてるんですか?

38年。


言えば作ってくれるって…(笑)
そんな近所のおじさんみたいなノリの紹介あります?

親方や工場長の大作さんももちろんですけど、見習いさんも経験とか年数によって作れるものが広がっていくんですよ。
4、5年経つとすごい大きいものとかもある程度ぐらいまでは多分作れると思うんですけど、入りたての頃はちっちゃい三寸皿くらいから始めるっていう感じですね。

はぇ~~~~

で、勾配があるものはろくろでしか作れないんです。
こういうろくろの物はお客さんには本当に人気なんです。軽かったり、綺麗だったり。

あ、物として人気なんですか?

見た目の綺麗さもそうですけど、土の重さも感じますし、どうしてもこういうろくろ物の方が人気があります。
でも、ある程度経験を積まないと大きいものは作れないんです。


やっぱり経験を積まないと作れるようにならないんですよ。
だからもう、オサムさんは言えば作ってくれるんですよ(笑)
こうした冗談が言えるほど、工房の雰囲気は明るく、また人と人との距離が近く、温かい。それがとっても印象的でした。
なんだか、うつわから受ける印象にとても近い。
また、背後でやんやと騒いでいても、黙ってろくろを回しているオサムさんの後ろ姿にはまさに想像していた職人さんの姿が重なりました。
猫のいる風景
こんなにも暑い工房。なのに、床には猫が。


すんごい暑いのに…、床には猫がいますね

そうそう、この工房は猫がたくさんいるんですよ。敷地内に十数匹くらいはいるのかな?

特にオサムさんが大の猫好きで!どこからか子猫が迷い込んでくることもあるので、動物病院さんと協力して里親募集したりもしてます。猫たちはお父さんと思ってるかもしれませんね

だから、近くにいるんですね。そっちは枕してますし。

そうです。まぁ、作業の合間に何かくれるからだと思うんですけど(笑)

時おり、お向かいさんの猫も混ざってご飯を食べているそうです。
居心地が良いのかな?
■お皿を作る工程“たたら”。なんか結構若い人が多くない?
ここで製作途中の黒ゴス唐草・5寸プレートを発見! 焼く前!

あ!これがもしかして!あ!本当だ!沖縄特産って書いてますね


えー!すごーい!これが…。
ありがとうございます!

なんかもうこれで均一に見えるけど、それぞれちょっと違いますね。

高さが違ったり、それが手作りの良さですね。

あ、これが…これが型なんですか?

これをかぶせて叩きます。


あれ?あそこにあるものと同じモノ? こっちはデッカくないですか?

焼いたらちょっとちっちゃくなるんですよ。

へー!


はぁー!なるほど!こういう感じなんだ!

まだ角とかが立ってるところは翌日、ちょっと乾いてから慣らして整えます。
この工程はろくろとは違うやり方で、作りの作業の1つです。翌日に「削り」と「化粧掛け」に進みます。

※化粧掛け:うつわの表面に艶や耐久性を与えるための釉薬(ゆうやく)を塗る工程
伝統工芸の現場には若い世代が少なく、後継者不足と言われていますが、陶眞窯には若い方の多く在籍して活気が溢れていました!
これは、工房2代目・相馬さんの想いと取り組みが反映されています。(インタビュー記事は近日公開予定)
■“絵付け”。30年も装飾を施してきたベテラン職人さんに話を聞く

話しかけてすいません…。とても集中力いるような気がするんですけど…。

ぜーんぜん大丈夫です!

何年くらいお仕事されてるんですか?

私はもう結構長いですね。座らせていただいて30年くらいです(笑)。

それはすごい!立派な職人さんでしたか!失礼いたしました!

前は彫りや魚の柄がメインだったんですけど、今の時代は魚よりこういった模様が好まれるようですね。

時代で柄が変わってくるんですか?

そうですね。2、30年前は魚の彫りが多かったんですけど、最近は絵付けのほうが主流で、彫りは少なくなってきていますね。

例えば100均のうつわと比べて、思うところってありますか?

私たちはもう全然違います。値段は上がりますが、それだけ手作業がかかっています。土も沖縄県産を使って、人も工程も多い。
良い値段にはなりますけど、良い物なんですよね。

手作業のものを選ぶ人、増えてる気がします。池原さんはどう見ていますか?

たとえばですけど、ご飯屋さんに行ってもね、やっぱりうつわを見ちゃいますよね。

へぇ!そうですか!

仕事柄、同じ中身でも、うつわは気になりますよね。

最近「このうつわ良かったな」というのはありましたか?

ありますよ。やっぱり“重みのある物”があって、良いご飯屋さんは良いうつわを使ってますよね~!

なるほど、職人さんの視点ですね。いい話です。

職人は焼入れ用のうつわを転んでブチまけないの?
下地が、実はとっても気になっていたことを質問してみました。

(板にたくさんの焼き前のうつわを運ぶ人を見て)
YouTubeの映像でも以前に見たことがあるんですけど、うつわを運ぶ途中で転ぶ人いますか?
盛大にぶちまけちゃうとか。

うつわを並べた板を肩に担いで窯まで持っていくのです。これ、怖くない?

いやー、あんまりいないんです。

いないんですか?

けっこう皆さん大丈夫ですよ。

そうなんですか?

乾いていないので滑り落ちることもないからですかね。

それでも、足を滑らせてぶちまけたりするってのは? 年に何回かとか?

ないですねぇ。

ないんですか?!

見たことがないですね。10年で1回か2回くらいかなぁ。
不思議! 緊張感がそうさせるんですかねぇ…。自分なら月に3回はぶちまけるのに。
みなさんはいかがでしょうか?
■いよいよ“焼き入れ”!1200℃を覗き込む


今、3台の窯に火が付いています。
素焼きの窯と言って、ろくろで成形したのち化粧をかける前に乾燥させて一回焼きます。
焼いて出てくると絵付け職人が絵付けをして、最後に透明のツヤっとした釉薬をかけるんです。
ろくろ物は窯に2回入ります。

へぇ~!

ただ、プレートに関しては素焼きをしないので1回だけです。素焼きの窯は最高で約800℃。
だから工房全体がめっちゃ暑いんですよ。窯の近くはホットヨガができるくらいで。

うぇ~~~! これは確かにホットヨガ屋さんの商売もできますね…(汗)

昨日窯から出てきたので、すぐ詰めて夕方にはまた火を入れます。
徐々に温度を上げて最高は約1230℃。急激に上げ下げすると中で割れるので、温度管理が大切なんです。


中は真っっっ赤ですね!

めっちゃ熱いんです! 3台焼くと命に危険を感じるくらいですよ。
1230℃は夕方くらいで、一度止めて水曜にかけてずっと下げ、木曜の朝に出す流れですね。
あ、たぶん今からチェックしますよ。


温度が上がってくると赤く光ってくるんですよ。


(中を見せてもらい)
はぁ! はいはい! すんごい熱気ですね。

4箇所の穴から見えるんです。
その明るさをだいたい合わせて焼かないと、場所で焼け方が変わるので、できるだけ明るさを合わせて火を入れます。

この火を見るって、センスが必要なんですか?

順番通りやっていればできるようになります。要は、この色の違いが見えるかどうかで。
温度で赤く光るのと白く光るのがあって、その違いを見ています。
火に目を通したしもじは、「まず火を怖がらないところからじゃないと始まらないな…」と感じました。あと、とんでもなく暑い!ムリ!
■ついに売り物になる手前!「失敗だ!」バリーン!!はどこ…?

ここが検品室になるんですよ。

へぇ~!


窯から出てきても、すぐ商品になるわけではないんです。触るとザラつくところがあるので、まずヤスリでツルツルに仕上げます。

あ、作業? まだこれは検品ではない?

そう。ガラスのテーブルだと傷になるので、できるだけ綺麗に取ってから検品に回します。

へぇ~。

ある程度のガタつきは直せますが、直せないものもありますね。


じゃあ、アウトレット品みたいなのもあるんですか?

あります。そういったものは陶器市で販売することも。どうしてもダメなものは破棄します。いわば“陶器の墓場”みたいな場所があって(笑)。

昔の陶芸家の「失敗だ! バリーン!」みたいなイメージが浮かびます(笑)。

でも、その欠片を拾ってディスプレイに使ったりもできますよ。

あー!はいはい。地面に埋め込まれているのを見たことありますね!

そんなわけで「バリーン!!」な陶芸家さんはいませんでした。
それどころか、工房は一つ一つの専門職人が技を極める分業体制で、和やかな雰囲気の中で作業が進んでいました。
想像との良い意味でのギャップが大きかったです。
2年後の夏まで注文が埋まっている

これが来年の3月分くらいまでの注文で…。さらに2027年の夏くらいまでのご依頼も受けています。ほかにも、もう1セット分くらい注文書が溜まっている状態ですね。

えぇえ!? そうなんですか…!発注はホテルさんなど大口が多いんですか?

個人のお店も結構多いですね。完成が2年後になってしまうので、少し多めにご注文いただくことが多いです。

はぁ~!


ホテルさんにも使っていただいていて、それを見た個人のお客さまが買ってくださることも多いです。本当におかげさまです。

自然な口コミですね。

それから、沖縄の方は普段使いで選ばれることが多いですね。県民の食器棚にはだいたい入っていると思います。
県内価格は他府県ほど高くないですし。

確かに、陶器市で買うイメージですね。祖父母も陶器市が好きでした。

割れたら、また新しいものを、みたいな感じで。
■結論!良い方向にイメージとギャップがありました!
陶芸は厳しい職人の世界というイメージでしたが、実際の現場は少し違いました。
『理不尽なルールや伝統で力を発揮しにくいのでは…』という先入観は、ここでは当てはまりませんでした。
伝統工芸の世界では若い職人の不足が課題ですが、陶眞窯では若い人が目立ちます。
大学卒業後に会社員を経て、まったくのゼロから飛び込む人も少なくないそうです。

陶眞窯の理念「伝統と革新」は、額の中の言葉ではなく日々の実践として息づいています。
次は、なぜ若い人が集まり、受注が絶えないのか――二代目・相馬さんに伺います。
「子弟」から「雇用」への転換、法人化、そしてインターネットが開いた新しい販路。想像以上に現実的で、試行錯誤に満ちた変革の数々。
「職人」や「伝統」という言葉だけでは語り尽くせない、具体的な取り組みの話が続きます。
きっと陶眞窯のうつわを手に取るとき、彩りだけではない、人の気配を感じられるはず。